迫る5G時代、C Channelはどこへ向かうのか

異端会議Vol.14_main_vol03

「5G時代のアジアナンバーワンメディアを目指す」と公言する森川亮氏。日本国内の女性たちを惹きつけてきたメディアは、今後「動画」を用いて何を狙いどこを目指すのか。そして海外進出はどう考えているのか。C Channelの向かう未来についてお話をお聞きした。

アジアでまず抑えるべきは、やっぱり中国

薮崎 「5G時代のアジアナンバーワンメディアを目指すということですが、森川さんはアジアの状況をどう見ていらっしゃいますか?」

Vol14_morikawa_01

森川 亮
1967年生まれ。筑波大学卒業後、日本テレビ放送網に入社。コンピュータシステム部門に配属される。インターネットの登場に刺激を受け、ネット・ビジネスに傾倒。多数の新規事業立ち上げに携わる。2000年にソニー入社。ブロードバンド事業を展開するジョイントベンチャーを成功に導く。03年にハンゲーム・ジャパン㈱(現LINE㈱)入社。オンライン・ゲーム市場でNo.1となる。07年に同社の代表取締役社長に就任。15年3月にLINE㈱代表取締役社長を退任。同年4月、動画メディアを運営するC Channel㈱を設立、代表取締役に就任。

森川 「日本で5Gが導入されるのは2020年なので、もうすぐそこの話です。しかしアジア全体ですと日本より遅くなると思います。ただ、中国は既にかなり進んでいますので、この2019年、2020年で東アジアには一気に広がるとみています。」

薮崎 「ちなみに今C CHANNELを10ヶ国で展開されているとのことですが、アジアで一番伸びそうな国はどこですか?」

森川 「やはり中国ですね。市場が大きいですから。中国である程度シェアを取らないと他の国へいってもしょうがないので。C CHANNELもまずは中国に注力したいと思っています。」

薮崎 「現状だと、規模としては日本が1番大きいですか?」

森川 「そうですね。売上ベースで言うと日本が1番です。ただ、全体規模だと中国の方が大きくなっていますね。」

薮崎 「中国でのマネタイズは日本と同じようにECになるんですか?」

森川 「そうですね。2018年にECの会社をグループ化しました。そこと連携しながら、インフルエンサーが商品を紹介し、そこでモノが買えるという仕組みを作ろうとしています。」

薮崎 「ライブコマースに力を入れるのでしょうか?」

森川 「ライブコマースもやるのですが、ライブコマースはそれをやれるインフルエンサーが限定されるのと、けっこう商品選びが難しいんです。それに、ライブコマースに出演するのは、インフルエンサーでいうとまだ影響力の小さい方が多いですよね。上位層のインフルエンサーは、まずはブランディングから入ります。動画もライブコマースよりイメージ動画的なものを中心にやり、一部でモノを売っている状況です。そのあたりをどう設計していくかみたいなところも大切ですね。」

薮崎 「そこまでのノウハウを中国でも作っていくということですか?」

森川 「インフルエンサーに関して言うと、中国の『インフルエンサー学校』の校長先生をスカウトしたので、ある程度人脈もできました。また、ECの会社としても日本のコスメを中国でどう売るか、というノウハウを持っています。そういったパーツは揃いつつあるので、今はそこをどう組み合わせて行くかというフェーズですね。」

薮崎 「アジアでメディアを展開して行くにあたって、森川さんはどれくらいの頻度で現地に行かれているんですか?」

森川 「実は、ほとんどテレビ会議で済ませているので海外にはそんなに行っていなくて、大体月1回ぐらいですかね。」

薮崎 「海外のメディア事業は合弁会社か、100% C Channelのどちらなのでしょう?」

森川 「合弁会社ですね。」

薮崎 「相手はどうやって見つけるのでしょうか?」

森川 「まずは現地に行き、女性向けメディアを運営しているか、もしくはトラフィックが多いか、ベンチャーか、みたいなところで条件を出して、そこに合う会社をリストアップします。それから連絡をし、提携のアプローチをします。その中からお互いの条件が合ったところと契約する感じですね。」

薮崎 「過半数の株は持ったまま提携して、現地での経営自体は合弁会社に任せる、といった感じですか?

森川 「そうですね。」

薮崎 「コンテンツは日本と同じものを配信するのですか?

森川 「同じものもありますが、現地にスタジオを作っているので、動画の3割ぐらいは現地で作っていますね。」

薮崎 「日本のコンテンツは音声を翻訳するのでしょうか?」

森川 「コンテンツにはほとんど『しゃべり』がなくて、音楽に合わせてやります。そこに字幕を入れるという作業になりますね。あとは現地でオリジナルのコンテンツを作るという感じです。」

異端会議Vol.14_img_02 (1)

目指すは、ブランディングもコンバージョンも設計できる動画メディア

薮崎 「森川さんはLINE時代も含めグローバルに活躍されていらっしゃいますが、日本企業がグローバルで負ける場面が多いのは、なぜだと考えていらっしゃいますか?」

森川 「様々あり、けっこう根が深い問題があると思います。まず一般的に、日本企業はスピードが遅いですよね。あとプロダクトに拘りすぎた結果、市場にニーズのないものをやってしまうのも原因だと思います。あとは語学とかコミュニケーションの問題もありますね。日本人は異文化の方とのコミュニケーションがまだまだ苦手です。意思決定できないことも問題で、『あなたは情報交換に来たのか?ウチはそういうのはやっていない。』と言われるなど、日本人が海外企業に行くと嫌がられる場面も多いと感じます。」

薮崎 「アジアでもですか?」

森川 「そうですね。なので、このような課題を解決するために、色々な会を作っています。一つは『WAOJE(ワオージェ)』という、もともと『和僑会』と言われていたものが分離してできた、世界で活躍する日本人起業家の会です。私が東京本部の副理事を務めていまして、世界中と繋がって助け合ったりしています。また、アメリカの『Endeavor(エンデバー)』という、グローバルで経営者を支援する会も日本で起ち上げました。それも日本の経営者で海外に行きたい人に様々なプランを紹介したりしています。このように色々繋がりつつはありますね。

薮崎 「C CHANNELはフロー型ではなく、結構コンテンツをストックしている印象があります。今後、どういったポジションのメディアを目指していて、どうビジネスを成長させようと考えていらっしゃるのですか?」

森川 「そうですね、ニュースメディアとはちょっと違います。今見なきゃいけない動画は実は少ないんです。どちらかと言うとHow toコンテンツがストックされています。例えば結婚式の時に 『ヘアアレンジをどうしようかな』とか、 夏に向けて『どうやって痩せようかな』とか、そういった課題に対して検索すると答えがあるメディアであり続けるというところがまずあります。」

薮崎 「今後、日本でのマネタイズの中心はECに寄せていくのでしょうか?」

森川 「そうですね。そのために必要なことは、ロイヤリティとフリークエンシーをいかに高めるかですね。C CHANNELのターゲットであるF1層(20~34歳の女性層)って、日本に今1000万人しかいないのですが、そこへはすでにほぼリーチできています。なので、その中でどれだけロイヤリティを高めるか、どれだけ来訪の回数を増やしていくか、そういうところを考えています。」

薮崎 「広告ではあまりマネタイズできないのでしょうか?」

森川 「企業の方は、いまだにテレビCMありきで考える方も多いですからね。これはどちらかと言うと我々が頑張るというより、時代の流れで変わってもらうしかないのではないでしょうか。大手広告代理店さんの『テレビは若い人は見てないけれど、テレビの方がやはり利益率が高いので』という言葉や、企業の広告宣伝部の方の『社長がテレビ好きなので』という言葉につられてテレビCMに出稿するケースも少なくないと感じます。」

薮崎 「そうですね。確かにリーチで考えるとテレビを越えるメディアはないと思いますが、ターゲット層によってはすでに合わなくなっているなと思うCMもあります。」

森川 「僕もテレビ局出身なのでテレビCMに頼る気持ちもわからなくはないんですよ。ただ、間違いなく若い人はこれからもテレビ離れが進んで行きます。なので『テレビに出稿しておけば広告のメディアプランニングをやっていることになるよね』という認識から、デジタルの動画メディアでもブランディングができるし、かつコンバージョンに繋がるということをC CHANNELが設計して証明していくことで、徐々にシェアを増やしていければと思います。」

異端会議Vol.14_img_07 (1)

アーティストが活躍するプラットフォーム、「mysta(マイスタ)」という新たな挑戦

薮崎 「テレビは、家に帰ったらつける、朝起きたらつける、みたいに『習慣メディア』と言われていますよね。 C CHANNELの視聴習慣はどのようになっているのでしょう?」

森川 「寝る前に見る方が圧倒的に多いです。ユーザーインタビューをすると、『まず起きたらLINEをチェックして、SNSをチェックしながら朝の準備をして、通勤電車の中でニュース系のウェブメディアを見ながらC CHANNELもちょっと見る』という方がいました。また、『ランチ後にウェブの記事とECサイトをちょっとチェックして、帰宅後にお風呂入って、寝る前にはじっくり1時間C CHANNELを見ます。』という方も。学生さんだと、『授業中に暇だとYouTube見ながら』みたいな方もいらっしゃいました。」

薮崎 「最近グーグルの検索で、YouTubeに流入させるようなアルゴリズムになっているなと感じます。森川さんの感覚として、YouTubeはまだまだ動画の中ではユーザーにとってメインのコンテンツだと思いますか?」

森川 「YouTubeの場合、ユーザーは本当に若いですよね。まず、子どもです。背景として、親が忙しい時にYouTubeを子どもに見せると動画に夢中になってくれるということが考えられます。そのためYouTube好きの子どもが増えて、全体的に底上げされています。そういった子ども達がどんどん大きくなってくるので、パイとしてはやはり大きいと思います。今、ユーチューバーもどちらかと言うと、”やってみた”系の子どもに受けるような芸人的な方が多いですよね。」

薮崎 「VTuberなどもどんどん増えていますが、C CHANNELで取り込まれたりしていますか?」

森川 「VTuberについても準備していますよ。『mysta』の方で。YouTuberとVTuberの対決などですね。」

薮崎 「今、『mysta』という新しい事業の話が出ましたが、今後に向けて森川さんが準備している事業について、ちょっとお話を聞かせていただけますか?」

森川 「C CHANNELはどちらかと言うと女性が活躍するプラットフォームなのですが、2018年に、彼女たちがC CHANNELを卒業してお子さんができた時に活躍してもらう『mama+(ママタス)』というメディアを立ち上げました。一方で、『mysta』はアーティスト系が活躍するプラットフォームです。ボーカリストとかダンサーとか、アイドルとか、お笑いとか。そういう人たちが活躍するプラットフォームがあったらいいよね、ということで、オーディションと課金をセットにしたビジネスモデルでスタートさせたのです。」

薮崎 「それでは、マネタイズの対象はユーザーですか?」

森川 「そうですね。正直そこはまだ手探りな部分もありますが。」

薮崎 「mystaもアジアで展開するといったことは考えているのですか?」

森川 「はい。日本国内での本格的なサービス開始が2017年4月からだったのですが、そこから売り上げも伸びてきて、ユーザーも増えてきました。いろんなタレントさんも参加しているので、海外展開していきたいと考えています。」

異端会議Vol.14_img_09 (1)

※インタビュアー:薮崎 敬祐(やぶさきたかひろ) 株式会社エスキュービズム代表取締役社長 2006年にエスキュービズムを創業し、IT、家電、自動車販売など様々な事業を展開してきた。現在は、今まで培ったテクノロジーを組み合わせて、小売企業の課題解決を行うリテールテックカンパニーとして躍進。「あったらいいな」ではなく「なければならない」領域に、新しい仕組みを提案している

 
〈関連リンク〉
「50代の森川亮は、なぜ女性向け動画メディアを作ったのか?」
 
「日本人は、時間の捉え方が下手である」