50代の森川亮は、なぜ女性向け動画メディアを作ったのか?

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ビューティ、ファッション、エンタメ、恋愛、DIYなどで月間再生数が6億回を超える、日本最大級の女性向け動画メディア「C CHANNEL」。この動画メディアを仕掛けるのは、元LINEの代表取締役だった森川亮氏。なぜ森川氏は50代にして、20代、30代女性から多くの支持を集める動画メディアを作れたのか。C Channelの森川氏にお話をお聞きした。

C Channelが取り組むのは『動画×インフルエンサー×EC』

薮崎 「ご無沙汰しています。以前お会いしたのは、まだ森川さんがLINEの社長の時でした。LINEの時とはまたすごい方向転換した事業をされているなと思いました。今されているC Channelの事業についてご紹介いただけますでしょうか?」

※社名をC Channel、動画メディア名をC CHANNELとして表記しています。

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森川 亮
1967年生まれ。筑波大学卒業後、日本テレビ放送網に入社。コンピュータシステム部門に配属される。インターネットの登場に刺激を受け、ネット・ビジネスに傾倒。多数の新規事業立ち上げに携わる。2000年にソニー入社。ブロードバンド事業を展開するジョイントベンチャーを成功に導く。03年にハンゲーム・ジャパン㈱(現LINE㈱)入社。オンライン・ゲーム市場でNo.1となる。07年に同社の代表取締役社長に就任。15年3月にLINE㈱代表取締役社長を退任し、顧問に就任。同年4月、動画メディアを運営するC Channel㈱を設立、代表取締役に就任。

森川 「メイン事業であるC CHANNELは、ファッション雑誌に置き換えられるような動画メディアを作れないかなと思って立ち上げました。当初は『クリッパーと呼ばれるインフルエンサーが、自身でいろいろなところに取材に行って、動画で投稿する』ということをメインに考えていて、結構幅広い領域を想定していました。しかしいざやってみると、動画の投稿のハードルが高かったのと動画での単なる情報コンテンツはさほどニーズがありませんでした。そんな中ヘアアレンジとかメイク、料理のハウツーの動画が一番人気だったんです。そこで、自社のスタジオで動画を作ることに切り替えつつ、自社メディアだけだとリーチが足りないのでSNSを使って拡散する、というようにして、ようやく数字が伸びてきました。」

薮崎 「トライアンドエラーをしながら今のメディアを作っていったのですね。メディアとして、一番の収益は広告でしょうか。」

森川 「最初は広告での収益がメインでしたが、そこにインフルエンサーを活用したインフルエンサーマーケティングを組み合わせて、今ではECもやっています。インフルエンサーが商品を紹介しつつ販売するモデルです。2017年にEC会社がグループに加わりまして、女性向けファッションECサイト『神戸レタス』と連携しています。さらに言うと、すでに自分たちで服を作ったり、メーカーとコラボしてコスメを作ったり、そういうところまでやっています。」

薮崎 「マネタイズの方法が幅広くなってきているのですね。」

森川 「そうですね。動画×インフルエンサー×ECを伸ばして行って、新しいマーケットを作っていきたいと考えています。将来的には売上の半分をEC事業や海外事業で生み出したいですね。」

薮崎 「なるほど。メディアというよりは、コミュニティになっていくイメージでしょうか?」

森川 「そうですね。より人が中心となって活性化するような形を考えています。今、日本とアジア9カ国で展開していますが、特に韓国、中国、台湾、タイ、インドネシアの5カ国は法人もあって、そこでは独自に制作したり営業したりしています。C CHANNELを軸にコミュニティを作っているのです。」

薮崎 「リーチするためには自社メディア以外のSNSを活用されているとおっしゃっていましたが、どのSNSが多いのでしょうか。」

森川 「SNSもトレンドがあって、もともとFacebookからの流入がけっこう多かったのですが、最近はInstagramが一番強く、それ以外はTwitterやYouTube、LINEが多いですね。」

薮崎 「やはりSNSからの流入は多そうですね。」

森川 「そうですね、SNS上でシェアされたコンテンツを見て、またそれをシェアしてというのが多いですね。そこから興味を持ってもらって、もっと色々みたい方は、アプリをダウンロードしてみるというようになっています。」

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50代の森川亮が、なぜ20代、30代の女性向けメディアを作ったのか

薮崎 「LINEの代表取締役を辞められるときに、いろいろなお誘いがあったかと思うのですが、どうしてあえてC Channelを立ち上げて新しい挑戦をするという選択をされたのでしょうか?」

森川 「僕自身はLINE時代にいろいろな人、いろいろな国で仕事する中で、どうしても日本や日本人のポジションがどんどん弱くなっているなということを肌で感じていて、残りの人生でなにか日本に残したいなと思っていました。日本を元気にするようなプロジェクトをつくりたいと思ったのです。」

薮崎 「なるほど、それで新たに自分の会社を立ち上げたのですね。動画メディアに事業を決めたのはどうしてなのでしょうか。」

森川 「最初は事業として、医療や教育などいろいろ考えていましたが、そのうちメディアの単に人を批判するだけのやり方に問題意識を抱くようになりました。若い人はそのメディアを見て大人や社会に対し悲観的になって自信を失っています。そこでもっとメディアを見て元気をもらうとか自分もやってみようと思うようなメディアを作り日本を元気に、そして更に世界に日本の情報を発信して日本に憧れる若者が増え結果日本に来たり、日本の商品を買ったりして日本に貢献できるようなそんなメディアを作りたいと思いました。」

薮崎 「ターゲットを女性にしたのはどうしてでしょうか?」

森川 「そこからはマーケティング分析によって決めました。新しいものを一番受け入れやすいのが子どもと女性なのです。でも子ども向けだとどうしても広告の収益化が厳しいので、若い女性向けに、まず始めようと思いました。」

薮崎 「メディアを事業として決めた後に、女性をターゲットにすると決めたのですね。」

森川 「そうです。まずは若い女性をターゲットにすることを決めました。また、その領域で一番広告がとれているのはファッション雑誌でした。同時にスマートフォンでの動画視聴の時代が来ると思っていたので、ファッション雑誌の動画化を目指しました。その中でニーズが見えてきたのでどんどんフォーカスしているという状況です。」

薮崎 「女性向けのファッション動画への強い思いではなく、冷静にマーケットを分析されて参入されたのですね。AbemaTVなどの他の動画メディアをどう見ているのでしょうか。競合とは異なるかなと思いますが。」

森川 「動画系という括りで比較されるんですけれど、AbemaTVはターゲットが全く異なることもあり、あまり意識していないですね。そもそも競合を意識するというよりは、『若い女性が一番接するメディアってなにか』を一番大事にしています。昔はやっぱりファッション雑誌だったじゃないですか。その後キュレーションメディアになって、今はYouTubeやInstagramがやっぱり一番多いんですよね。なので、そことの違いをどう出すかとか、逆にそことうまく連携したときにどんな価値が出せるかということをいつも考えています。」

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『かわいい』の感覚は、やはりわからない

薮崎 「ターゲットとは性別も年代も違う森川さんが、女性向けメディアを事業とするのは大変じゃないかなと思います。いかがでしょうか。」

森川 「やっぱり大変ですね(笑)」

薮崎 「ですよね(笑)」

森川 「経営者として、ビジネススキームやモデルを作ったり、数字で判断したりはできるものの、その数字の奥にある本質的な部分っていうのは正直わからないです。なので最初は男性社員が多かったのですが、今は女性社員が圧倒的に多いです。」

薮崎 「やはり当事者でないとわからない感覚ですよね。」

森川 「『これがかわいい。こっちはかわいくない。』というような、どっちがかわいいかというのは当然わからなくて。あと、キャラクターも萌え系のキャラと3Dバリバリのキャラとどっちがいいのかなんて判断つかないですね。」

薮崎 「そこはもう数字で判断すると割り切っているのですか?」

森川 「そうですね。前職のLINEでも、最初ゲーム事業から入ったのですが、実はゲームはあんまり好きじゃなかったんですよ。でもわからないからこそ、数字で客観的に判断できているんだと思います。大きな方向性を決めた後の、細かいところはそれが好きな人に任せるしかないと思っています。」

薮崎 「経営陣にはそんなに若い人がいるわけじゃないですよね。経営陣が数字で判断して、現場の社員が作り上げていっているのですか?」

森川 「ある程度方向性が決まれば、現場の女性社員が輝ける場所や機会をどれだけ作れるかが大事だと思っています。仕事の面白さはもちろん、オフィスの環境を整えたり、パーティーを毎月やったりとか、そういった領域に力を入れています。」

薮崎 「なるほど。確かに動画も昔のようにプロフェッショナルが作った綺麗なものだけではなくて、一般の人が作った動画もよくシェアされますよね。」

森川 「そうですね。ただ、普通の人のブログを見てもつまらないじゃないですか。それと同じで、動画もある程度質が求められてきています。映像編集のテクニックも上がってきていますが、それ以上に素人が作っているのに、ちょっと一手間加えているとか、切り口がユニークとか、そういう動画がシェアされますね。」

薮崎 「その一手間やユニークな切り口というところで、現場の感覚に任せているのですね。かなりの数の動画がすでに溜まっていますよね。今後の目標はどのように考えているのでしょうか。」

森川 「2020年の5G時代における、アジアでNo1のメディアカンパニーになりたいと考えています。5Gになると当たり前のようにスマートフォンで動画をみるようになると思っていて、関連しそうなものは今のうちに一通りおさえるように動いています。」

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※インタビュアー:薮崎 敬祐(やぶさきたかひろ) 株式会社エスキュービズム代表取締役社長 2006年にエスキュービズムを創業し、IT、家電、自動車販売など様々な事業を展開してきた。現在は、今まで培ったテクノロジーを組み合わせて、小売企業の課題解決を行うリテールテックカンパニーとして躍進。「あったらいいな」ではなく「なければならない」領域に、新しい仕組みを提案している