宇宙ビジネスが発展しないのは、マーケティングの問題だ~ALE・岡島社長の挑戦~

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人工で流れ星を作り出す。夢物語のように聞こえるこの取り組みに挑むのは、株式会社ALEの岡島礼奈氏だ。科学とエンターテインメントの両立を目指す岡島氏に、人工流れ星事業の現状や今後の可能性についてお聞きした。

火星にまだ行けていないのは、マーケティングに失敗しているからだ

薮崎 「1960年代70年代にアポロ計画であれだけのことができたのに、それ以降宇宙への取り組みが発展していないように感じます。」

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株式会社ALE を2011年9月に創設、CEO に就任。就任以前はゴールドマンサックス社にて債券投資及び未公開株を取り扱い、その後、モバイルゲーム・コンサルタント業にて1 社ずつベンチャー企業の立ち上げを経験。モバイルゲームベンチャー企業時代に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のオープンラボのメンバーに選出される。東京大学理学部天文学科卒/同大学院理学系研究科天文学専攻にて博士号取得。

岡島 「『月をマーケティングする』という本に書かれているのですが、アポロが月に行けたのはマーケティングの賜物であって、我々がまだ火星に行けていないのはマーケティングに失敗しているから、ということだと思います。」

薮崎 「なるほど。つまり、技術の問題ではないのですね。」

岡島 「その通りです。『行くぞ』と宣言して、関係者ひいては世の中に『いかにこのミッションが必要なものとして認識させることができるか』なのです。『月に行く意味ってあるの?』『宇宙への投資によって、経済価値はどれくらいあるのか』などの問いにどう答えていくか、そしてどう周りをノセていくかという、技術ではないビジネス的な観点が宇宙進出にとって重要なのだと思います。」

薮崎 「宇宙という領域における日本の現状をお教えください。」

岡島 「今、アメリカが『宇宙での資源は先に見つけたもん勝ち』というようなこと言っていますが、日本もしっかり対策をしないと手遅れになってしまうと危惧しています。

   特に日本は、高い技術があるのに機会逃してしまっているかと思います。

   例えば、チリに『アルマ』という建設費が2000億円くらいかかっている天体望遠鏡があるのですが、それはヨーロッパとアメリカと日本のプロジェクトなんですね。日本の技術があれば、一番最初に先陣切れるチャンスがあったのに、日本は何らかの事情で参加表明が遅れてしまったと聞いています。望遠鏡には日本のカーボンなどの素材や技術がかなり使われていると聞いていますが、日本が主導権を握っているわけではないようです。『月への進出ではぜひ先陣を切ってやってほしいな!!』と思っています。」

薮崎 「団体内でのリーダーシップや交渉等の場面で発揮しなければならない『我の強さ』は、日本人が苦手とするところですね。」

岡島 「苦手ですね。まず、あらかじめ要求をバシッと言わないですよね。さらに交渉もあまりせずに受け入れてしまう。中国やインドの人とお仕事をしていると、彼らは『とりあえず言ってみる』みたいなことあるじゃないですか。で、こちらが『そんな条件飲めるわけないでしょ!』と言うと、『てへー』みたいにやるじゃないですか。ああいうことを日本人はやらないですよね。宇宙とか今、もう中国には完全に負けていると感じます。色々チャレンジできるところは強いですね、なんか見ていて。リスクを恐れてチャレンジできないとどんどん弱くなるんだなと思います」

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※インタビュアー:薮崎 敬祐(やぶさきたかひろ)株式会社エスキュービズム代表取締役社長 2006年にエスキュービズムを創業し、IT、家電、自動車販売など様々な事業を展開。「あったらいいな」ではなく「なければならない」領域に、新しい仕組みを提案している。

 企画がビジネスを面白くする

薮崎 「ビジネスとしては、一回いくらというような売り方をされるのですか?」

岡島 「一回いくらとかでは売ろうとしていないんです。現在『シューティングスターチャレンジ』というプロジェクトが進行中で、2019年に広島・瀬戸内地域で人工流れ星の実現を目指しています。この時には、直径200kmの範囲で見ることが出来るので、みんなで楽しんでください、という場を作りたいと考えています。流れ星を楽しむ『場』を作って、そこで様々なイベントを企画していきたいと思っています。」

薮崎 「モノではなくコトを売っていくのですね。結構な企画力が必要ですよね。」

岡島 「はい。うちは企画が得意な人もいますし、あとは広告代理店と今一緒にやっていて、トップ級のクリエイターさん達とプランを出しあったりしています。『SHOOTING STAR challenge』には、ファミリーマート様や日本航空様などがオフィシャル・パートナーになっていただいているので、今後様々な仕掛けをつくっていけると考えています。他のビジネスにも言えることかもしれませんが、流れ星事業を成功させていくためには、“みんなを”巻き込んで、“みんなで”盛り上げていくことが重要だと考えています。」

薮崎 「ウェブサイトも含め、ALEからは技術系の会社という感じがしないです。」

岡島 「宇宙ベンチャーって、8割、9割がテック系の人なんですよね。我々は半分がマーケティングチーム、もう半分がテックチームで、宇宙エンタメ企業を標榜しています。テクノロジーとマーケティングを両立させることで成長していけると考えています。」

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宇宙はみんなつながっている!インターステラテクノロジズに期待

薮崎 「宇宙ビジネスで注目している企業はありますか?」

岡島 「堀江貴文さんがファウンダーをされていて、稲川貴大さんが代表をされている、インターステラテクノロジズ(以下、IST)は注目しています。今のALEは、誰かメインの人が打ち上げる人工衛星に相乗りの状況なので、ロケットの脇にちょこっとALEの機器を載せてもらっているんです。なので、そもそもALEの行きたいところとそのメインの人工衛星が行くところがイコールではないので、彼らが行きたいところの中で、ALEが行きたいところに近いところを選んでいるんです。ISTのロケットは小型でさらに安価なので、ISTの成功はALEの事業をさらに進めてくれるはずです。」

薮崎 「なるほど、今のALEさんが使用している人工衛星は、タクシーじゃなくてバスの乗客のような感じなのですね。」

岡島 「そうです、まさに現状はバスに乗っていて、おそらくISTはタクシーです。しかも安価なタクシー。軌道が自分達で選べるということは、演出の多様性にもつながってくるので、本当に期待しています。」

薮崎 「2020年に東京オリンピックもありますが、今後はどのように考えていらっしゃいますか?」

岡島 「人工流れ星は現在開発中のため、オリンピックで公式にという話は現時点では進んでいませんが、世界中から注目が集まるイベントですので、その時期に合わせて何かできないかという気持ちはあります。

   あと、私たちは空をキャンバスに見立てて、流れ星でさまざまなものを描きたいと考えています。『Sky Canvas』と呼んでいますが、絵や文字などでいろいろな演出をしていきたいと考えています。また、同時に人工流れ星事業を行う中で得たデータを、他社と連携したり、販売したりと活用していけたらと考えています。」

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〈関連リンク〉
「世界初!流れ星をエンタメにする、ALE・岡島社長の人工流れ星計画」